役員報酬を上げると、税金と社会保険料が増える。
これは、皆知ってます。
でも、子どもがいる場合、
給料を上げると「消えるもの」がある話は、意外と知られていません。
児童手当が消える。
高校の就学支援金が消える。
保育料が上がって、医療証が取り上げられる。
私は、児童手当の所得制限に実際に引っかかっていた側の人間です。
子どもの医療証も没収されました。
で、今は子どもが私立高校に通っている。
所得制限の「あっち側」と「こっち側」、両方を親として体験してきたわけ。
そして、この数年で所得制限の地図は大きく書き換わりました。
児童手当は2024年10月に所得制限が撤廃。
高校授業料も2026年4月に所得制限が撤廃。
一方で、今も残っている壁もあります。
サラリーマンと違って、経営者の役員報酬は自分で決められる数字。
壁の位置さえ知っていれば、壁に合わせて設計できるのです。
→適切な役員報酬で節税する。個人と法人の税金と社会保険料、所得分散時の実効税率の違い。
というわけで、2026年版「子どもと役員報酬の壁」の地図をまとめておきます。
- 児童手当の所得制限は2024年10月に撤廃済み。対象は高校生年代まで、第3子以降は月3万円
- 高校授業料の所得制限も2026年4月に撤廃。私立は最大45万7,200円/年
- 今も残る最大の壁は大学無償化。子ども2人以下の世帯は所得要件あり(子3人以上は2025年度から所得制限なし)
- 0〜2歳の保育料は今も住民税所得割で決まる。報酬を上げれば保育料も上がる
- 役員報酬は自分で決められる。壁の位置を知ってから決める
私は、所得制限に「引っかかる側」でした
かつての児童手当には、所得制限がありました。
一定の所得を超えると、子ども1人あたり月5,000円の「特例給付」に減額。
我が家は子どもが3人いるので、この差は大きかったです。
小児医療費助成も同じ。
ある年、突然「受給資格喪失通知書」という紙が届きました。
「この処分について不服が有る場合は・・・」って、不服しかないんですけど。
医療証が無くなった年に限って、子どもが盲腸(急性虫垂炎)になりまして。
手術からの1週間入院、大人と同じ3割負担で、支払いは10万円超え。
子どもは風邪も貰ってくるし、歯医者にも通うし、
医療証の有り無しで、年間数万円は変わっていた実感があります。
当時の所得制限は、だいたい年収700万〜800万円あたりから始まる設計でした。
制度上は「高所得者」の扱いですが、
子ども3人を育てながらの700万円は、贅沢できる金額じゃないですからね。
税金は人より多く払っているのに、給付は削られる。
医療証が無いという理由で、お金持ちのレッテルだけは貼られる。
・・・というのが、「あの頃」の話。
ここからが本題。制度は大きく変わりました。
2024〜2026年で、子育ての壁はほとんど消えた
児童手当:2024年10月に所得制限が撤廃
2024年10月の改正で、児童手当の所得制限は撤廃されました。
私が引っかかっていた壁は、もう存在しません。
所得制限オーバー者向けの「特例給付(月5,000円)」も、制度ごと消滅しています。
対象も支給額も拡充されました。
| 対象 | 月額 | 第3子以降 |
|---|---|---|
| 3歳未満 | 15,000円 | 30,000円 |
| 3歳〜高校生年代 | 10,000円 | 30,000円 |
※高校生年代=18歳になった後、最初の3月31日まで
対象年齢は「中学生まで」から「高校生年代まで」へ拡大。
第3子以降は、年齢を問わず月3万円。
しかも第3子のカウントには、大学生年代の兄姉も含められるようになりました。
上の子が高校を卒業すると、第3子が「第2子」に繰り上がってしまう。
あの理不尽なカウント方式が解消されたわけです。
支給も年3回から年6回(偶数月に2か月分)へ変更。
子ども3人が全員高校生年代以下なら、
1万円+1万円+3万円=月5万円。年間60万円。
所得制限の時代に「うちは対象外」で終わっていた家庭も、満額です。
高校授業料:2026年4月に所得制限が撤廃
高校の就学支援金には、長らく「世帯年収約910万円」という壁がありました。
これも2026年3月31日に改正法が成立し、4月1日から所得制限が撤廃されています。
- 公立高校:年11万8,800円(授業料は実質無償)
- 私立高校:最大45万7,200円/年(旧制度の上限39万6,000円から引き上げ)
2025年度は過渡期で、
年収910万円以上の世帯にも公立相当額だけは支給されていましたが、
私立の加算は所得制限つきのまま。
私立まで含めた完全撤廃は、2026年4月からです。
ここは、実体験の話をさせてください。
ウチの子は、私立高校に通っています。
就学支援金に「引っかかる側」と「引っかからない側」で、
私立で親が実際に払う金額は、全然違います。
ウチのケース(神奈川県)だと、国と県の補助を合わせて授業料側で最大48万円。
所得帯によっては、入学金の補助も付きます。
つまり、補助が貰えるか貰えないかで、
親の負担は年50万円くらい変わるのです。
所得制限があった時代、私はこれを「引っかかる側」として払ってきました。
45万7,200円という支援額は、私立の授業料のかなりの部分をカバーする水準。
これが親の所得で貰えたり貰えなかったりしていたのが、旧制度でした。
「私立は無理」と最初から選択肢を消していた家庭には、大きい変化かなと。
ただし、無償化されるのは授業料のみ。
入学金、施設費、制服、教材、修学旅行の積立・・・
私立は授業料以外の出費がガッツリあります。
「私立無償化」という言葉のイメージほど、タダにはなりません。
ここは払っている親として断言できます。
断言の根拠に、実額を出します。
ウチの子の私立高校、初年度の支払い総額は約180万円でした。
| 項目(初年度・実額) | 金額 |
|---|---|
| 授業料(月3.9万円×12) | 468,000円 |
| 入学金・学校維持費・施設費 | 420,000円 |
| 修学旅行積立 | 237,230円 |
| 予納金・空調費 | 156,500円 |
| 制服・体操服・指定用品 | 151,155円 |
| iPad利用料・電子辞書・検定料 | 95,788円 |
| 教科書・行事などの都度徴収 | 85,984円 |
| 教育充実費(月6,000円×12) | 72,000円 |
| 教材料(月6,000円×12) | 72,000円 |
| 通学定期・各種手数料 | 38,293円 |
| 合計 | 1,796,950円 |
無償化の対象になるのは、この表の一番上の行だけです。
修学旅行の積立が24万円、制服と指定用品で15万円、
よく分からないままiPadの利用料も年7万円ほど。
しかも「都度徴収」の類は事前に明示されておらず、
入学説明会で初めて「年間15万円ほど掛かります」と発覚しました。
もう一つ、高校にも残っている所得の壁があります。
国の就学支援金は全世帯対象になりましたが、
神奈川県の上乗せ補助と入学金補助には「年収約750万円未満」の所得制限が残っています(神奈川県:私立学校学費支援制度)。
都道府県の上乗せは、まだ親の所得で変わる。
役員報酬を自分で決められる側にとっては、ここも設計の範囲です。
出典:高等学校等就学支援金制度の拡充のための法律案が成立|文部科学省
※私立の上限額45万7,200円は執筆時点の情報です。最新の金額は文科省サイトでご確認ください。
それでも残っている壁
最大の壁は「大学無償化」
児童手当と高校の壁は、消えました。
じゃあ全部消えたのかというと・・・残ってます。
2026年時点で最大の壁は、大学です。
大学の学費支援は「高等教育の修学支援新制度」。
授業料・入学金の減免と、給付型奨学金のセットです。
こちらは今も所得要件があり、
文科省の書き方だと「世帯年収約600万円(目安)まで」の世帯が対象。
役員報酬がここに収まっている経営者は、少数派のはずです。
ただし、2025年度から大きな例外ができました。
扶養する子どもが3人以上の「多子世帯」は、所得制限なし。
大学等の授業料・入学金が、国の定める上限まで減免されます。
| 多子世帯の減免上限(私立大学) | 金額 |
|---|---|
| 授業料 | 年70万円 |
| 入学金 | 26万円 |
私立大学の授業料は年100万円前後が相場ですから、
年70万円の減免はかなり効きます。4年間なら280万円。
注意点は「扶養する子が3人以上」というカウントの方。
上の子が就職して扶養から外れると、
残り2人になった時点で対象から外れるケースがあります。
兄弟の年齢差によっては「全員分フルには貰えない」ので、
細かい判定は、必ずJASSO・文科省の最新情報で確認してください。
つまり、こういう地図です。
- 子ども3人以上 → 大学の壁も消えた(2025年度〜)
- 子ども2人以下 → 大学の壁は残っている
子ども2人の経営者にとっては、
ここが「報酬を上げると消える」最後の大物ってことになります。
もっとも、児童手当のように壁の1万円手前で調整できた制度と違い、
世帯年収600万円の目安に役員報酬を合わせに行くのは・・・
本末転倒じゃないのん?とも思いますけど。
出典:高等教育の修学支援新制度|文部科学省/多子世帯支援について|JASSO
0〜2歳の保育料は、今も報酬で決まる
3〜5歳児クラスの保育料は、2019年10月から全世帯無償。ここは変わらず。
残っているのは、0〜2歳児クラスです。
0〜2歳の保育料は、住民税非課税世帯のみ無償。
それ以外は、市区町村ごとの「応能負担」=住民税の所得割額で決まります。
つまり、役員報酬を上げれば、保育料もそのまま上がる。
所得制限というより、所得スライドですね。
しかも保育料は、夫婦の所得割額の合算で決まります。
夫婦で役員報酬を取っている場合も、世帯でしっかり計算される。
金額表は自治体ごとに違いますが、
年収帯の上と下で年間数十万円変わる構造は健在です。
救済は、多子世帯の軽減。
0〜2歳児クラスの第2子は半額、第3子以降は無償。
以前あった「年収360万円未満相当の世帯だけ」という所得要件は撤廃され、
全世帯が対象になりました。
具体的な金額は、お住まいの市区町村の利用者負担額表で確認してください。
子どもの医療費助成は、自治体で差がある
医療証で子どもの医療費がタダになる、あの制度。
あれは国の制度ではなく、自治体の制度です。
対象年齢も、所得制限の有無も、住んでいる市区町村で違います。
ここ数年は、所得制限の撤廃と対象年齢の拡大(高校生年代まで)が全国的な流れ。
とはいえ、所得制限が残っている自治体もまだあります。
私が喪失通知書を貰ったのも、この制度。
同じ年収でも、市境をまたぐと医療証が貰えたり貰えなかったりする、自治体ガチャです。
1つ、実務的な注意を。
所得が下がって対象に戻る場合、自動では復活しません。
自分で再申請しないと、役所は調べてくれない。
対象に戻ったことを知らずに病院で払った分は、
医療証の発行後に領収書を出せば返金してもらえました(私の自治体の場合)。
引っ越しや報酬改定のタイミングでは、
お住まいの自治体ページで、対象年齢と所得制限の有無を確認してください。
家族に払う給料の壁も、2025年改正で動いた
ここまでは、自分の報酬の話。
経営者にはもう1つ、「家族に払う給料」の壁があります。
配偶者に給料を出す、大学生の子に手伝ってもらう。
この年収の壁も、2025年の税制改正でガラッと動きました。
| 壁 | 旧 | 現在(2026年) |
|---|---|---|
| 住民税 | 100万円 | 110万円 |
| 所得税(103万円の壁) | 103万円 | 123万円 |
| 社保加入(106万円の壁) | 月8.8万円以上・51人超企業等 | 賃金要件は2028年6月までに撤廃予定 |
| 社保の扶養(130万円の壁) | 130万円 | 130万円のまま(19〜23歳は150万円未満に緩和) |
| 配偶者特別控除の満額 | 給与収入150万円まで | 160万円まで(201.6万円でゼロ) |
| 大学生年代の子の控除(新設) | 103万円 | 150万円まで満額63万円・188万円まで段階的 |
ポイントだけ拾います。
103万円の壁は、123万円へ。
基礎控除と給与所得控除の引き上げで、
給与収入123万円まで所得税がかからなくなりました。
所得の低い層には時限的な上乗せがあり、
160万円まで所得税がかからないケースもあります。
大学生年代(19歳以上23歳未満)の子には「特定親族特別控除」が新設。
子のバイト年収150万円までは、親が満額63万円の控除。
188万円までは段階的に控除が続きます。
「子が103万円を超えた瞬間、親の税金が跳ね上がる」問題は、だいぶ緩和されました。
一方、社会保険の130万円の壁は骨格そのまま。
税金の壁ばかり報道されますが、
手取りへの打撃が大きいのは、昔から社保の壁の方です。
106万円の壁(勤め先での社保加入)は、
賃金要件が2028年6月までに撤廃される予定で、
「壁」というより「加入が標準」の方向に進んでいます。
なお、個人事業主が家族に給料を出すなら青色専従者給与ですが、
専従者は配偶者控除・扶養控除と併用できません。ここは昔から変わらず。
→青色専従者給与はいくらが得か。届け出書類・源泉徴収・年末調整まとめ
出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁/No.1177 特定親族特別控除|国税庁/No.1195 配偶者特別控除|国税庁/「年収の壁」への対応|厚生労働省
役員報酬は、壁に合わせて設計できる
まとめます。2026年時点の壁の地図は、こうなりました。
| 制度 | 所得制限 | 状態 |
|---|---|---|
| 児童手当 | 撤廃(2024年10月) | 消えた |
| 高校の授業料(就学支援金) | 撤廃(2026年4月) | 消えた |
| 大学無償化(修学支援新制度) | 子3人以上:なし/子2人以下:あり | 残っている |
| 保育料(0〜2歳児クラス) | 住民税所得割でスライド | 残っている |
| 子ども医療費助成 | 自治体による | 自治体による |
| 社会保険の扶養(130万円) | 維持 | 残っている |
かつての私は、壁だらけの地図の中で役員報酬を決めていました。
児童手当、医療証、高校の就学支援・・・
年収700万〜800万円のあたりに壁が密集していたので、
「壁の手前に報酬を置く」が定石だったわけです。
今は、大きい壁は2つだけ。
0〜2歳の子がいる時期の保育料と、
大学の費用(子ども2人以下の場合)。
子どもの年齢によって、壁がある時期と無い時期がハッキリ分かれるようになりました。
役員報酬は、一度決めたら原則、期の途中では変えられません。
だからこそ、決める前に壁の位置を確認しておく。
これは年収を選べないサラリーマンには出来ない、経営者だけの設計です。
とはいえ、給付のために報酬を抑え込むのも本末転倒。
壁が消えた分、「稼げるなら上げる」という判断がしやすい時代になったとも言えます。
税金・社会保険料まで含めた報酬設計の本体は、こちらにまとめてあります。
→適切な役員報酬で節税する。個人と法人の税金と社会保険料、所得分散時の実効税率の違い。
→個人事業主の節税策と優先順位。小規模企業共済、経営セーフティ共済、iDeCo、国民年金基金の比較と違い。
これから法人化を考えている方は、こちらから。
制度は、変わります。
私が引っかかっていた壁は消え、新しい壁が出来て、たぶんまた変わる。
一番損をするのは、変わったことを知らないまま、
昔の地図で報酬を決めている人ですからね。
P.S.
私立高校の学費の振込明細を見るたびに思うのです。
所得制限があった時代、「うちは対象外」の紙切れ1枚で終わっていた支援が、
今は全世帯に届くようになった。
あの頃の自分に教えたら、たぶん信じないだろうなと。
ちなみに入学金はクレジットカード払いに対応していたのですが、
決済手数料7,913円は、しっかり親持ちでした。
ポイントは付いたので、良しとします。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。税制・制度は変更される場合があります。金額・要件は年度や自治体によって変わるため、最新情報はこども家庭庁・文部科学省・国税庁・お住まいの自治体のサイトでご確認ください。具体的な税務処理・役員報酬の設計については税理士等の専門家にご相談ください。


コメント
コメント一覧 (1件)
本当わかります!!!!!!
うちは旦那と年の差婚で今は収入が多いけど将来は一般より減っていきます。子供に対してはみんな平等でなきゃおかしいと思います。
子供が病院にタダだからって頻繁に行く人も絶対多いと思います。なら有料の人には優先して見てほしいです。