給与変更後に必要な社会保険の手続き。月額変更届(随時改定)の書き方。

社会保険料の標準報酬改定通知書

役員報酬の変更をしたら、
併せて必要となる手続きが、社会保険事務所への書類提出。
随時改定による月額変更届の提出ってやつ。

役員報酬の変更方法と注意点。給与変更後に必要な手続きと流れ。

役員報酬を変更する場合は、
社会保険料も変わるので、提出するのを忘れずに。

目次

給料を変更したら月額変更届け

給料(役員報酬)を変更したからと言って、
給与が大きく変わらない(2等級以上の差が生じない)場合は、
社会保険事務局での手続きは必要有りません。

毎年7月の「算定基礎届」を提出するまでは、
従来の保険料のまま、標準報酬月額から算出した、
社会保険料が徴収されるわけです。

以前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合に、
報酬月額変更届けの提出が必要となります。

被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
(2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

随時改定(月額変更届)|日本年金機構

月17日以上働いてる被保険者で、
3ヶ月分支払った役員報酬の平均報酬月額・・・
というわけで、役員報酬の変更決定したからといって、
即手続きが必要というわけではなく、
給与を3回支払った直後に変更手続きが必要という事。

2等級以上ってのが、どれくらいの金額かというと、
令和3年度の保険料額表から、減額した場合で算出してみる。

※参考→令和3年度保険料額表(令和3年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

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  • 月額79万円で2等級ダウン→月額71万円(-8万円
  • 月額59万円で2等級ダウン→月額53万円(-6万円
  • 月額50万円で2等級ダウン→月額44万円(-6万円
  • 月額38万円で2等級ダウン→月額34万円(-4万円
  • 月額30万円で2等級ダウン→月額26万円(-4万円
  • 月額20万円で2等級ダウン→月額18万円(-2万円

※具体的な金額については責任負いかねますので、各自でご確認下さいませ。

上記は、おおよその金額ですが、
元々の給与額が低いほど、
少ない金額差で変更手続きも必要となります

月額変更届けは、給与を3回払った後

3ヶ月間給与を払った後に標準報酬月額変更届け提出し、
4カ月目に新しい保険料が適応となる。

ややこしいのが、
社会保険料は支払い月ベースでの計算となるという点。
「何月分の給与なのか?」では無く、
「何月に支払われた給与なのか?」ということ。
実際に支払われた給与を基に、社会保険料が徴収されるのです。

ですので月末締め翌月払いの企業は、ここで1カ月ズレます。
4月分から給与変更したのに、給与支払いは5月10日。
社会保険料は5月、6月、7月の支払いを終えてから月額変更届提出、
翌月の8月分から、新しい社会保険料が適応となるという流れ。
そして、8月分の社会保険料は、9月末に徴収されるわけですね。

給与額が上がる場合は、3ヶ月間は以前の低い社会保険料のまま
逆に、給与額が下がる場合は、3ヶ月間は以前の高い社会保険料のまま
ということです。

いずれにせよ、3ヶ月分の給与を支払ったら、年金事務局で手続き。
「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」を提出しましょう。

報酬月額変更届の書き方と注意点

報酬月額変更届は、わかりづらい書類という事で、
私がミスしたポイントを挙げておきます。

被保険者報酬月額変更届 = 70歳以上被用者月額変更届

「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」は、
日本年金機構の公式ページにてダウンロード印刷可能です。

「70歳以上被用者月額変更届」しか出てこなくて探しまくったのですが・・・
平成30年3月5日より、月額変更届の用紙が変更となり、
「被保険者報酬月額変更届」と「70歳以上被用者月額変更届」が同じ用紙になりました。

※参考→随時改定に該当するとき(報酬額に大幅な変動があったとき)|日本年金機構

「健康保険 厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届 70歳以上被用者月額変更届」
っていう記載。70歳以上向けと勘違いしたけど・・・コレです。

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カラーになってるけど、モノクロ印刷でも大丈夫でした。

月額変更届の記入方法

新しいフォーマットとなり、以前よりも分かりやすくなりましたが・・・
やっぱり私は間違えましたので。

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提出者記入欄は、特に問題ないかと。

  • 事業所整理記号:年金事務所から毎月送られてくる領収書(納入告知書)に記載されてます。
  • 事業所所在地:住所
  • 事業所名称:法人名(個人事業主なら屋号、個人名)
  • 事業主氏名:代表者氏名 ※自筆署名の場合は押印不要
  • 電話番号:事業所の電話番号

毎回戸惑うのが、コチラ。

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  • ①被保険者整理番号:保険証(健康保険被保険者証)に書いて有ります。代表者は1番。
  • ②被保険者の氏名:姓名を記入
  • ③生年月日:数字だけで記入。別表参照。昭和60年6月12日→「5-600612」となる。
  • ④改定年月:標準報酬月額が改定される年月。変動後の賃金を支払った月から4か月目
  • ⑤従前の標準報酬月額(健):変更前の標準報酬月額(健康保険料)千円単位で記入。
  • ⑤従前の標準報酬月額(厚):変更前の標準報酬月額(厚生年金保険料)千円単位で記入。
  • ⑥従前改定月:前回変更した日付。算定基礎届を提出した日が多いかと。未記入でもOKでした。
  • ⑦昇(降)給:給料が上がった月、下がった月を記入。昇給 or 降級に丸をする。
  • ⑧訴求支払額:遡及分の支払いが有った場合に記入。私は関係ないので未記入。
  • ⑨給与支給月:変動後の給与を支払った月を3カ月分記入。
  • ⑩給与計算の基礎日数:対象となる日数を3か月分記入。末締め翌月払いの場合はズレる。
  • ⑪通貨によるものの額:支払った金銭(通貨)を3か月分記入。
  • ⑫現物によるものの額:通貨以外で支払った場合は記入。私は未記入。
  • ⑬合計:⑪と⑫の合計額を記入。私は⑪と同じ金額。
  • ⑭総計:⑬の3カ月分を合計した金額。
  • ⑮平均額:⑭の総計金額÷3した金額。1円未満切り捨て
  • ⑯修正平均額:修正する金額が有る場合。私は未記入。
  • ⑰個人番号(基礎年金番号):70歳以上被用者のみ記入。私は若いから未記入。
  • ⑱備考:該当するものを丸。私は「昇給降級の理由」を選択し、理由は「基本給の変更」と記入。

ちなみに、毎年7月に提出する算定届も、 
平成30年度より、新しいフォーマットになってます。

※参考→定時決定のため、4月~6月の報酬月額の届出を行うとき|日本年金機構

書き方は、算定基礎届けも、月額変更届も、ほぼ一緒。
こちらも「70歳以上被用者算定基礎届」も一緒の用紙なので、混乱しないように。
70歳未満の人も、同じ書類を使います。

「従前の標準報酬月額」は平均給与額では無い

上記で⑤に当たる部分は、健康保険料と厚生年金保険料を別々に書く必要が有り、
標準報酬月額にて記載しなければなりません。しかも千円単位です。
標準報酬月額って、保険料額表で「等級」の横にある数字。
平均給与額ではありません。

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何故、健康保険料と厚生年金を別々に記載する必要が有るのか?というと、
健康保険料と厚生年金保険料の最大等級が違うから。
健康保険料の標準報酬月額は、最大135.5万円まで
厚生年金は標準報酬月額は、最大63.5万円まで

適切な役員報酬で節税する。個人と法人の税金と社会保険料、所得分散時の実効税率の違い。

例えば、月額給与が80万円の場合は、⑤欄の記入方法は、
「健 800千円」「厚 620千円」となるわけです。
※市区町村により異なります。

支給月で記入する場所と、給与月で記入する場所

社会保険料は支給月で考えるというルール。
これが、やっぱり複雑です。
弊社は末締め翌月払いなので、1カ月ズレる場所も多い。
以下は、実際に直された項目と、直されなかった項目。

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  • ④改定年月
  • ⑦昇(降)給
  • ⑨給与支給月
  • ⑩給与計算の基礎日数

④改定年月は、標準報酬月額が改定される年月ってなってますが・・・
変更した給料を支払った月から4か月目を記入となります。

⑦昇給月・降給月は、会社側で給与額を変更した月でOK。

⑨給与支給月は、給与を支払った月を書くのですが、
⑩給与計算の基礎日数は、給与支払いの基礎となる日数なので、
末締め翌月払い会社の場合、支払い月と日数がズレます。
4月支払いの場合、対象日数は前月(3月)の日数(31日間)となるわけ。
これは算定基礎届け提出する場合も一緒。私は、毎年間違えます。

5等級以上減額した場合は添付書類も必要

標準報酬月額を大幅に下げる場合、それを証明する、添付書類が必要でした。
※令和2年度は不要と言われました

以下の1.~4.のいずれか1つおよび所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し
(固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで)

  1. 株主総会または取締役会の議事録
  2. 代表取締役等による報酬決定通知書
  3. 役員間の報酬協議書
  4. 債権放棄を証する書類
    ※ その他の法人の役員の場合は、これらに相当する書類

賃金台帳の写しとありますが、給与明細で代用可能でした。
株主総会議事録と給与明細の原本持ってけば、コピーしてくれるかと。
給与が大幅に下がる場合ってのは、5等級以上下がる場合。

「大幅に下がる場合」とは、原則、標準報酬月額の等級が5等級以上下がる場合をいいます

5等級未満の減額なら、添付書類は必要有りません。
月額報酬が79万円→65万円(39等級→35等級)に減額とする場合、
5等級ですねと言われ、添付書類が必要と言われてしまいました。
4等級だと思ってたんだけどー・・・「以上」と「下がる」が理解できません。

変更届を提出しなければならない、「2等級以上の差」と
添付書類が必要な「5等級以上下がる」の意味は、微妙に違うのかもしれません。
いずれにせよ、添付書類が必要かどうか?は電話で確認できますので、
管轄の年金事務所に、事前に電話問い合わせをオススメします。

算定基礎届けの提出が不要となる場合

算定基礎届の提出は、毎年7月10日までに提出。
4月、5月、6月に支払った給料を基に、
1年間(9月から翌年8月まで)の標準月額を決定する。

私の場合、同じく4月、5月、6月に支払った給料を基に、
随時変更で月額変更届を提出したので、
算定基礎届の提出対象者では無くなるのですが・・・

提出対象者

算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在の全ての被保険者および70歳以上被用者です。
ただし、以下の(1)~(4)のいずれかに該当する方は、算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
(4)8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方

定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

電話で確認したら、直前に月額変更届けを提出した場合でも、
算定基礎届けの⑱備考欄で「その他」に〇して、
「7月月変提出済み」と記載して提出してと言われました。

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調べてみたら、日本年金機構のサイト上にも記載有り、
「3.月額変更予定」に丸をして提出という指示がありました。

※上記(3)および(4)の方については、算定基礎届の報酬月額欄を記入せず、空欄とした上で、備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付してご提出ください。

定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

電話での指示とは違いますけど、
随時改定で月額変更届けを出したよってアピールすれば良いのでしょう。

結局のところ、算定基礎届の提出対象者では無くとも、
算定基礎届は提出しないとダメなのでした。

ちなみに、令和3年4月より「統括表」の廃止となり、
7月の提示決定で提出する書類は「月額算定基礎届」の一つだけになってます。

社会保険の月額変更届まとめ

私は、毎回間違えないように、調べてやってるつもりなのですが、
毎回、事務局で訂正されることも多い。
電子申請も、複雑すぎて意味分からない。

GビズIDの登録方法と社会保険の電子申請(算定基礎届)手続きして気づいたこと。

毎度確認するたびに「え?」って事は、よくありますので、
事前に、自分のエリアの年金事務所に確認した方が良い。

いずれにせよ、変更届の提出期限は「3ヶ月の給与の変動があった後速やかに」。
窓口持参でも郵送でもOK。
電話でも丁寧に教えてくれますが、不安なら直接行くのが確実。
間違えても、その場で訂正してくれますから。

毎月の社会保険料が下がると、源泉所得税が上がる不思議。
全て一つの税としてでまとめて請求してくれると、
もっと分かりやすいんだけどね。

高い社会保険料・・・配偶者は給与抑えて扶養に入れるという方法も有る。
役員報酬1,000万未満で所得分散するなら、
社会保険料を考えても扶養に入れてしまった方が、残るお金は多いです。
ただ、年収130万円未満でも、社会保険の扶養に入れられるわけでは有りません。

配偶者役員の社会保険喪失手続き流れ。非常勤役員を社会保険の扶養に入れる条件と注意点。

雇用者は、健康診断を受けさせる義務も有りますが、
協会けんぽで健康診断を申し込むのも、非常にややこしいっていう。

協会けんぽ(社会保険)で健康診断。申込み方法と料金について。

健康診断も、それなりの金額ですけど、
健康保険料だけで、病気になる金額。
稼げば稼ぐほど、医療費負担も多くなるわけで、
無理して働かない方が、長生きできる気もしました。
子供が居る場合は、児童手当や医療費助成制度の所得制限にも気を付けて下さい。

児童手当・小児医療費助成制度・保育料・高校授業料無償化の所得制限。子供の補助金と親の年収の関係。

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この記事を書いた人

KJ新谷のアバター KJ新谷 小さな会社の取締役

平成21年に輸入物販で起業して、既に起業15年目。
法人10期目。小さい会社の代表です。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんにちは、はじめまして。
    うめさぶろうと申します。
    記事で気になるところがありましたので、

    >4月分から給与変更したのに、給与支払いは5月10日。
    >社会保険料は5月、6月、7月の支払いを終えてから月額変更届提出、
    >7月から社会保険料は変わるんだけど、
    >8月10日支給分から、新しい社会保険料が給与天引きとなるわけです。
    >※変更になった保険料は、9月末に会社から年金事務所へ支払いとなります。

    7月から社会保険料は変わる、とありますが
    8月から変わるのではないでしょうか?

    記述内容が丁寧でとても参考になる記事があるので、いつも参考にさせて頂いていますので、よろしくお願いいたします。

    • 誤りが有ったようで申し訳ございません。
      ご指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。

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